はたらく一家


ユーチューブの成瀬作品を見ました。今回は「はたらく一家」。題名からしプロレタリア文学ですが、成瀬に掛かると貧乏がプロレタリアになりません。
1939年作品
原作 徳永直
脚本 成瀬巳喜男
出演 徳川夢声

原作自体が成瀬好みなのでしょう。坂口安吾は「これも、やつぱり、読物だ。文学だと思つてはいけない。」てな事を言ったらしいが、だから成瀬好みじゃないだろうか。貧しい生活を描いているが、彼はその原因を掘り下げようとして、この映画を描いているわけではないでしょう。話は貧乏を抜け出す結論も、方向も見出さずに終わります。最後の場面で、親と子供たちと先生が話し合って、だからと言って結論が出て終わるわけではないのですが、子供たちが二階で「がんばるぞー」と言って、でんぐる返しを繰り返します。この辺の演出が、この頃の成瀬の特徴なのでしょうか。このような突飛な演出が、この後の作品にも出てきます。突飛ですが、うまく決まっているのです。それが成瀬の天才技で、その作品のイメージを説明的ではなく、映画的に表しています。