旅役者


ユーチューブに成瀬巳喜男の初期の作品が多くあります。その中で今回は「旅役者」を見ました。何かの本で、「男が路地裏をうろちょろしているだけで、映画になってしまう」と言うような事を成瀬監督の映画に対して言っていました。まさにそのような映画です。たいした事件らしい事も起きないが、決して飽きさせない映画を作ってしまう監督には脱帽です。

1940年度作品
脚本:成瀬巳喜男
音楽:早坂文雄
出演:藤原鶏太(釜足)、柳谷寛、清川荘司清川虹子中村是好馬、高勢實乘

旅芸人中村菊五郎一座の役者俵六(藤原釜足)は、馬の前脚を務める役者で、その芸の研究に余念がない。ひょんなことから、馬の頭がつぶされ、本物の馬を使う事になってしまう。そして本物の馬が評判になってしまい、彼のプライドも傷ついてしまう。それぞれの役者が役にはまり、のどかな田舎町のなかで話は、ちょっと胡散臭く、小さな意地のぶつかり合いで進んでいきます。この様な話になると、成瀬監督は絶品です。

さて最後の落ちはどうでしょう。舞台上で本物の馬が尿を垂らしてしまうので、「やっぱし本物の馬は、馬の芸はできない。」とまとまりそうですが、そうなりません。この辺の終わり方は、評価は分かれるのかもしれませんが、「さすが」だなと思いました。ネタ晴らしにならない程度に言うと、本物の馬を「役者馬」が追いかけて行きます。